The Wizard of Science

人類学のこと、歴史・考古学のこと、航空機のこと、特許のこと、海外の言語や書籍、などなど、たまには横道にそれたりする長文が多めなブログです。

トリケラトプス論争

 今でこそどちらかというと人類学に偏りがちな自分なのですが、その元はといえば古生物にも強い興味があり、その延長で古人類や考古学の勉強に進んだようなものだったりします。
 ただ、今でも進化学の話には飛びつくし、古生物の話も情報があれば逐一チェックするようにしていたりします。

 さて、そんな中で今回は比較的古生物でもメジャーな恐竜のお話です。
 恐らくは恐竜といってまず最初に出てくるのがティラノサウルスでその対照に描かれていたのは首の長い大型竜脚類でなければ、三本の角を生やしたトリケラトプスというのが定番中の定番ではなかったかと思います。

 さて、このトリケラトプス。特徴的な姿をしているので想像図が出ると大体の人は思い出せるのではないかと思います。
 100826largetriceratops.jpg
想像図元:http://www.gizmodo.jp/2010/08/post_7554.html

 改めて冷静に見るとかなり変な形をしています。個人的には体の前ばかりに重心がかかりすぎるような気がしてます。そのせいか前足がかなり湾曲してしまってますし。
 模型を持っていた人ならもしかしたら経験あるかもしれませんけど、この恐竜すごく前につんのめってバランスが悪いんです。頭と胴体が別パーツだったりするとトサカと角が重いのでしっかり接着していないと首が折れ…。

 また、映画なんかだと勇壮にサイのように駆け回って角を振り回すのですが、こうして写真のサイを見てみると、実はサイって結構頭が小さくて足も垂直でしっかりしていてぐっと体全体のバランスがいいので、トリケラトプスにサイと同じような動きは多分無理だろうと私は思っております。

c5932ab3.jpg
写真元:http://www.un-plugged.jp/blog/?p=604
 

 さて、そんなトリケラトプスは有名でありながらその分類が正しいのかどうか実はずっと論争が続いていたりします。
 特にちょうど今から一年ぐらい前に出たこの報道はそれなりに話題になりました。

トリケラトプスが教科書から消える?

引用元:http://www.gizmodo.jp/2010/08/post_7554.html

 どうやら1800年代後半にトリケラトプスとトロサウルスの両方を発掘したオスニエル・マーシュ古生物学者が、そもそも2つの全く異なる形にしか見えない化石を見て、別々の恐竜として発表してしまったのが事の始まりだったようですが、ロッキーズ博物館の古生物学者であるジャック・ホーナーさんおよびジョン・スカネラさんの両名が、改めて29のトリケラトプスの頭蓋および9のトロサウルスの頭蓋の化石を徹底調査した結果、トリケラトプスとトロサウルスは同一種であり、トリケラトプスが成長を遂げたものがトロサウルスだったとの結論に至りましたよ。


 o0501030410647682931.jpg
想像図元:http://ameblo.jp/oldworld/entry-10595137803.html

 一応、実際の論文はこちら>http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/02724634.2010.483632


 ちなみに、記事のタイトルとは異なり、トリケラトプスがトロサウルスの若い個体だったとしても先に発見して命名したほうが優先されるので、その場合、トロサウルスが消えてトリケラトプスに一本化されることになると思われます。

 なぜか同様の記事がまた今年に入っても登場し、拡散されているようです。
 http://jin115.com/archives/51809238.html?1315797357%7C


 さて、トロサウルスはトロサウルスで恐竜図鑑の一端によく載っていたこともあり、この記事の後、各所で残念がる声があったのですが…実は今年のはじめには既にまた異論が出て議論が再燃していたりします。
 
 それというのも、トリケラトプスとよく似た近縁種であるネドケラトプスを比較した結果、トリケラトプス、トロサウルス、ネドケラトプスはそれぞれ全く別の種類であると結論付けたというのです。

Anatomy and Taxonomic Status of the Chasmosaurine Ceratopsid Nedoceratops hatcheri from the Upper Cretaceous Lance Formation of Wyoming, U.S.A
参照元;http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0016196


Despite its convoluted taxonomic history, Nedoceratops hatcheri does indeed display several features that distinguish it from typical Triceratops and Torosaurus specimens, as well as other chasmosaurines (such as the profile of the squamosal, lack of a nasal horn, and presence of small parietal fenestrae). Even if N. hatcheri represents an aberrant Triceratops, the anatomy of N. hatcheri is inconsistent with the hypothesis that it is a transitional form between the “young adult” (classic Triceratops) and “old adult” (classic Torosaurus) morphotypes of a single taxon. Unless Triceratops underwent ontogenetic changes radically different from any other known ceratopsid, it seems most likely that the latter two taxa are also distinct from each other.

676px-Nedoceratops_BW.jpg
ネドケラトプス想像図:wikipediaより

 ざっくり言ってしまうと、老体であると考えられるネドケラトプスの頭骨にはトリケラトプス(若い個体)>トロサウルス(老体)のような変化が起きたことが確認できず、また、ネドケラトプスの頭骨とトリケラトプスの頭骨の類似点から、トリケラトプスとネドケラトプスに対し、トロサウルスは離れた分類と考えるのが妥当である、というちょっとテクニカルな結論の出し方をしています。

 後、ここでは述べられていませんが、個人的にはトロサウルスの頭骨で多く見られる特徴的な二つの穴がトリケラトプスの頭骨から変化したものだ…と説明する理由に乏しいのもあるかもしれません(一応重量軽減と書籍では説明されていることが多いのですが)。よくこの穴の部分には皮の膜が張られて大きな目玉模様が図鑑では描いてあったりします。子供のころトロサウルス=目玉模様と記憶した人は結構多いはず(もちろん、模様はただの想像なのですが…)。

torosaurus_web.jpg
トロサウルスの頭骨のフリルには左右に2つの穴が開いている。

 なんでそんなに分類が揺れ動くのか?と不思議に思う方も多いかもしれませんが、この手の分類の手がかりにしているのはあくまで頭骨の形、特徴をそれぞれ比較・検討して、その時点で最も妥当だろうと考えられる結論を出しているに過ぎないということを留意しておく必要があります。
 詳しく書きはじめるとそれだけで本ができてしまうぐらい複雑なのですが、科学が発達しても、まだまだ人間の目で比較しているという要素はとても大きいのです。


 さて、この分野は判断が非常に難しいのですが、個人的にはまだまだトリケラトプスとトロサウルスは別種と考えるのが妥当かなという気がしています。
 もちろん、この結果も後からの発見で覆る可能性は十分にあります。
 そんなわけで下手な拡散に惑わされず(実は上の記事が回ってきたときにはまた再反論かと思って嬉々として開いてみたら去年の情報だったのでがっかりしたのです…)続報を見守っていきたいところです。



 〆


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  1. 2011/09/14(水) 22:35:49|
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