The Wizard of Science

人類学のこと、歴史・考古学のこと、航空機のこと、特許のこと、海外の言語や書籍、などなど、たまには横道にそれたりする長文が多めなブログです。

クラでSNS構想(1)

 最近はとにかくインターネットの普及と発達に伴って、それを使ったコミュニケーション手段も多種多様となっていっています。
 最初は電子通信・メールといった小規模から始まり、掲示板、ホームページといった手段を通じて大規模化し、更に初心者にも使いやすくしたブログ、そして、SNSといった個々人の事情に合わせた機能を持つものができました。これらによって遠方、遠い昔の知り合いとまた連絡を取ることができたりして、不思議に思いつつも、私もすっかり楽しんでいる次第。

 これらの歴史は私よりももっと詳しい人がいるので割愛しますが、今後もこういったネットを通じたコミュニケーションの手段というのは多様化し、広がっていくだろうと予想されます。
 そんな中で、あえてちょっと古いコミュニケーションの手段を取り入れてみてはどうだろうか?と思いました。
 「古いコミュニケーション手段」というとまるで狼煙や手紙といったコンピューターから離れた過去の物理媒体を想像しがちですが、そうではなく、どちらかというとコミュニケーションの”意識”の方の話であり、ツールとしてのコンピューターやインターネットは活用していきます。

 では、その”コミュニケーション意識”とは何かというと、私達が普段の生活の中でお互いに決めている交流の暗黙の約束事と深いかかわりがあります。
 例えば、誰かからメールをもらったとして、そこには相手からのあいさつ、近況報告、そして連絡が欲しいといった旨の内容が書かれています。
 そうすると、こちらもあいさつし、近況を述べ、そして連絡を続けるような文章を書いてなるべく早い段階で返します。もし、事情があって遅れた場合は謝る文章が付け加わるでしょう。
 これは特にそうしろと決められているわけではありませんが、やはり相手との関係を考え始めると、相手に対してしてもらったことと大よそ同等の行為をすることが求められます。
 所属している文化の形態によってそのあいさつや報告内容の方法は変わりますが、これもお互いになるべくフェアになるようなものを選ぶのが常です。

 ところが、このようなコミュニケーション意識は必ずしも昔から万国に普遍的に存在していたわけではないと考えられます。
 なぜなら、人類学の研究の中では相手との交流が非対称である物もいくつか報告されているからです。相手と同等でない交流というとまるで上下関係のある身分制度のように考えられますが、そうではありません。もっとも、身分制度の交流もお互いの立場を考えればフェアともいえるのですが、その辺りの話はここではすこしずれるので割愛します。
 さて、その非対称の交流の中の代表的なものとして必ずといっていいほど学習するのがパプワニューギニアの島々で行われる「クラ」と呼ばれる交易の方法です。
 これは貝で作った首飾りと腕輪を中心とした交流なのですが、その方法はちょっと変わっているので少し解説します。

 クラ交易とは簡単に述べると以下のような手段を用いて交流します。 
1、首飾りを持っている者と腕輪を持っている者は、ある一定期間内にそれを誰かに渡さなくてはいけない。首飾りか腕輪を貰った者はそのお礼に何かを渡す。
2、ただし、お礼はその場ですぐに返してはならない。ある一定期間をおいて返す。長い場合は一年を超えてもよい。
3、お礼には同等のものを貰うことを期待するが、基本的に何を渡すかは自由。その内容に関してお互いに不服を言ってはならない。また、なにを渡すのかも議論してはいけない。一度渡した後で取り消すことはできない。
4、首飾りを持っている者が腕輪を貰った場合、また逆に腕輪を持っている者が首飾りを貰った場合、必ず腕輪もしくは首飾りを渡さなくてはいけない。
5、首飾りは交易圏内を時計回りに、腕輪は反時計回りに交換される。
kula.jpg


 ちなみに、首飾りと腕輪はお祭りのときなどに使われるようですが、基本的に日常生活において価値はあまりないものです。
 
 なぜ、このような交流の形態ができあがったのか?というのもこれらの島々では環境の変化によって生活の変化が起き易く、通常のその場における同等の価値を持った物の交換が成立しないケースが多く、かといって交流をやめればいざというときにお互いを助け合うこともできないので、このようなルールが成立していったのだと思われます。

 これはまだ確証のないことではあるのですが、大昔の狩猟をやっていた時代の人達も安定して交換材料となる獲物を獲ることは非常に難しかったため、世界各地で各々のグループは類似の交流方法を持っていた可能性は高いと私は考えています。
 貨幣の登場と社会の変革が農業の発達によって行われたことを鑑みても、お互いの交流を同等にしようという意識は比較的新しい時代に構築されたと考えるほうが妥当でしょう。

 さて、もちろん、このパプワニューギニアの人々の間ではこのクラ以外にも等しい価値とお互いが感じるもので物々交換をする方法も存在しています。しかし、それはクラとは明確に区別されます。もし、クラにおいて同等の価値を求めたり、早い返礼を求めることがあったりした場合、それはルール違反として非難の対象となります。


 この即時の見返りを求めないクラという方法をSNSに取り込んでみては同だろうか?と私は思いました。特に現在、あちこちのSNSで見られる問題を見ると、その多くは即時の同等の返礼を中心とした意識に集約されるのではないかと思うからです。

 ではクラという文化人類学の研究をどうSNSに生かしていくのか?
 その具体的な方法は次回書いていきたいと思います。





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テーマ:文化人類学 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2011/11/26(土) 13:37:01|
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