The Wizard of Science

人類学のこと、歴史・考古学のこと、航空機のこと、特許のこと、海外の言語や書籍、などなど、たまには横道にそれたりする長文が多めなブログです。

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人類の進化は線か枝分かれか

現在、ゲームの製作は佳境に入っており、見せ場となるイベントが次々と追加されています。
一応、ゲームとしては通して遊べるため、そろそろ、全体のテストプレーと調整に入り、来月中には完成の目処がつくといったところ。

そんな状況ですが、一つ重要ともいえる発見と発表がグルジアよりあったため、久しぶりに人類学の話題で記事を書いてみたいと思います。

元の論文はこちら:http://www.sciencemag.org/content/342/6156/326.abstract

日本語で読めるものは以下になります。
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO61238790Y3A011C1CR8000/
http://blog.livedoor.jp/nobukazukawai/archives/4617083.html
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20131019-OYT1T00426.htm


「ヒト祖先は同一種」の新説…進化過程見直しも」

これまで複数種がいたとされてきた、原人(ホモ・エレクトス)などの「初期ホモ(ヒト)属」と呼ばれる現代人の祖先が、実は同一種だったとする新説を、グルジア国立博物館や米ハーバード大の国際研究チームが18日付の米サイエンス誌に発表した。

<中略>

 研究チームは、グルジアのドマニシ遺跡で見つかった5体の初期ホモの頭骨などを分析。5体と、約200万年前のアフリカにいた「ホモ・ハビリス」や「ホモ・ルドルフェンシス」は、同じホモ・エレクトスと結論した。5体の頭部や顔、歯などの個体差からみると、アフリカの2種との違いは別種と呼べるほど大きくないという。


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さて、以前の記事で上のような画像を貼ったと思います。
これは、過去に考えられていた人類の進化が、上のように猿のような生き物からその途中段階を経て現代の人類へまるで一つの線に沿って進化してきたと考えられていたのが、現在では多種多様な人類が枝分かれのように混在しながら現代の人類に行き着いた、と考えられるようになった、というものです。

しかし、今回の発見と発表に依れば、人類の進化はやはり過去の考えのように一つの線に沿っている…ということだそうです。
今まで見つかっていた"同時代に存在する原始的な人類の化石"は全てホモ・エレクタスという一種のうちの地域派生型に過ぎず、見た目上は様々な種類が混在しているように見えただけで実際の系統は一本だけ、ということらしいのです。

さて、この発表の内容に関してですが、人類学者たちの反応としては以下の記事が参考になり、基本的にこのような「過去に戻った」という考えに関しては否定的な傾向にあります。


参考: http://africaanswerman.com/?p=8638

Not Paleontology’s Waterloo


I think they will be proved right that some of those early African fossils can reasonably join a variable Homo erectus species,” Chris Stringer told London’s Guardian. He continued:

“But Africa is a huge continent with a deep record of the earliest stages of human evolution, and there certainly seems to have been species-level diversity there prior to two million years ago. So I still doubt that all of the ‘early Homo’ fossils can reasonably be lumped into an evolving Homo erectus lineage. We need similarly complete African fossils from two to 2.5m years ago to test that idea properly.”


人類学におけるワーテルローの戦いではない。*

クリス・ストリンガー博士に依れば、
「いくつかのアフリカで見つかった初期人類の化石はホモ・エレクタスの派生に統合されるということが証明されたということは確かだろう。
 だが、アフリカは初期の人類進化において多量の記録を残している場所であり、200万年前に種のレベルでの分岐が起きていることは確かであろう。だから、全ての初期人類化石がホモ・エレクタスの分類に合理的に統合されるというのは疑わしい。この考えが適切かどうかを判断するには200-250万年前においてアフリカの化石に同様の現象が起きているか確認することが必要だ」
ということです。

とどのつまり、ここでいえるのはホモ・エレクタスは我々が考える以上に1種の中で多様な形質を持っていた、また、そのいくつかは初期の人類とも思えるような原始的な特長さえ持ち合わせていた、ということは確かということのみで、それを過去の初期人類化石全てがホモ・エレクタスである、ということにするべきではない、ということになります。

実際、これまでのホモ・エレクタスの発見でも既にかなりの多様な形質があることは分かっており、また、ネアンデルタール人も地域によってかなりの形質変化が見られることが分かっています。
そして、当然、我々現世人類ホモ・サピエンスも、地域や環境によって別種と思えるほどに形質が変わることは専門家でなくても周知の通りです。

例えば、現生人類の中でも非常に原始的な(悪く言えば猿のような)人というのはたくさんいます。
では、そのような原始的な特徴を持っている人が多くいるから、猿人は現生人類の派生種ということになるでしょうか?
それは絶対に違うと言い切れます。

今回の発見に関しては、ホモ・エレクタスの派生に関してはかなり重要かつ、新しい考えを我々に提供してくれたといえます。
が、一方で過去に見つかった初期人類の化石をホモ・エレクタスに統合してしまおうというのはかなり早とちり気味な考えであったといえるでしょう。

そういうわけで、単純に論文や日本語の記事を鵜呑みにするのではなく、同時に他の科学者達の意見やこれまでの発見等を統合して冷静に判断する必要があるのだと、改めて考えさせられるニュースだったのだと思います。


*この記事ではエルバ島から帰還し再び覇権を握ったナポレオンを連合軍が破ったワーテルローの戦いを人類学上の常識が変わる一大事件の比喩として使っています。日本語で言うなら"天下分け目の戦い"みたいな使い方です。


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テーマ:進化学 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2013/10/26(土) 18:46:57|
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