The Wizard of Science

人類学のこと、歴史・考古学のこと、航空機のこと、特許のこと、海外の言語や書籍、などなど、たまには横道にそれたりする長文が多めなブログです。

クニスペルの噂と実態について

 現在制作中の、WW2英雄列伝クニスペルの制作状況が日本戦争ゲーム開発さんで公開されました。
 http://wargame.jp/wgbl/
 軽く捕捉すると、この進み具合だと、来月いっぱいでとりあえず仮完成、6月中にテストと調整、夏には公開できるのではないかという見込みです。当初よりも押し気味になっていますが、完成度の高いものをお届けできればとがんばっています。

 今はゲーム本編も当然力を入れて作っていますが、同様に史実解説の作業の方にも時間を割いています。
 今回は1回の解説が濃ゆめで、しかもそれが全30ステージ分存在していますので、結構な文量になっています。
 これだけでも下手な小冊子やブログ記事よりも多いので、ゲームをやらない人用に、多少加筆修正したうえで、どこか別のところで公開できたらいいなとか思ったり思わなかったり。

 さて、このゲームを作っている間にYahooのブラウザゲーで「ミリ姫大戦」というゲームが公開されていました。
 こういっては身も蓋もないのですが、いわゆる「艦これ」が流行ったので、題材を変えて近いものを作ったといいますか、船ではなくて主に第二次大戦で活躍した将軍、現場指揮官、兵士達が少女になって戦うというものです。
 ここにクニスペルやカリウス、ケルシャーも登場しており、せっかくなのでちょっとやってみたのですが、どうも有名なエースだけあって強力な分レア度も高く、残念ながらこの記事を書いている時点では仲間に入っていません……。
 そのwikiもできていてクニスペルについて書かれたページもあるのですが、どうも資料が少ない中、噂に尾ひれがついたものがあるように見えました。それ以外にも調べるといろんな噂がたくさん。
 ツィッターの方でも連続で呟いたのですが、巷で言われていることと、自分の見解をこちらにも整理してまとめておきます。
Kurt_Knispel.jpg
>乱暴な兄貴肌だった。
 この髭面写真のインパクトのせいでぶっきらぼうな強面キャラのイメージが広まっていますが、クニスペルは当時22〜23歳の若造で、しかも部隊の中で特に背が低く、上官には普通に敬語を使えたようです。
 少なくとも、乱暴だという話は探している限り見当たりませんでした。"ある事件"を起こしているため、そのイメージが広まっているようです。ただし、この事件は後述しますが、ちょっと複雑なので普段から乱暴だった証拠にするのはどうなのかという気がします。
 クニスペルは独ソ戦の最初から戦っているので戦争後期にでもなれば大ベテランであり、後から入ってきた兵士たちにとってはまさに"兄貴"な存在だったかもしれません。
t_102d.jpg
もう一つ有名なのはこの演習パレードの時のもの。髭と髪と身なりを整えただけで大分印象が違いますね。ちなみに、これは映像で残っているものの一つで、クニスペルが写るのは一瞬ですが、ずらっと並んで行進するティーガーIIの大隊は圧巻で見ごたえがあるものです。
Knispel_6.jpg
 こちらは戦友と写っているもの。右がクニスペルです。この時はちょっとがっしり気味ではありますが、普通の少年みたいですね。

>素行が普段から悪かった
具体的な普段の素行の悪さを書いた資料は見当たりませんでした。むしろ、証言集では現場の上官の評判が良く、扱いに苦労していた様子もありません。仲間を大切にすると上官のルーベルも語っています。

>上官には嫌われていた
元ネタは、司令部に報告しに行った際にクニスペルの「態度がきちんとしていなくて訛りが酷い」という点に司令官が憤慨して「あいつはベルリン人だ」というものが一応あります(実際はズデーテン出身)。ただ、これはどちらかというとドイツ軍内における出自の差別意識の感が強く、クニスペル自身の行動の問題と考えるのはちょっと弱い気がします。
なお、ドイツにおけるベルリンの訛りの酷さは有名で、よく他地域からネタにされたり馬鹿にされるらしいです。

>素行が悪いので出世できなかった。
そもそも士官学校に行っていないので最終階級が曹長止まりなのは不思議でもなんでもないです。入隊から2~3年で軍曹、4年程度で曹長まで行ったのはむしろ出世頭ではないかと思います。また、士官ではないのにラジオで特集された唯一の兵士なので相当注目されていた兵士なのではないでしょうか。

>クニスペル自身もナチス、とりわけ東部戦線で活動していた「アインザッツグルッペン」の将兵を嫌っていた。
ナチスを嫌っていたかどうかは良くわかりません。ただ、彼の故郷であるズデーテン地方のドイツ人救出に乗り出したのはナチスであり、クニスペルがわざわざ嫌悪しなければならない要素はあまりないような気がします。アインザッツグルッペンは前線より下がったところで人種や共産主義を理由に排斥を行っている部隊で、クニスペルが嫌っていた証拠はないものの、そうであっても不思議ではなく、また嫌っているのはクニスペルに限った話ではなく当時の前線の兵士全般がそうだったことでしょう。

>特にナチス高官から嫌われていた。
クニスペルがナチス高官と会ったという話は調べた範囲では存在してません。基本的に現場の一兵士でしかないクニスペルがナチス高官に会うタイミングはほとんどない気がします。騎士十字章でも受賞すれば話は違うのでしょうけど、クニスペルは受賞しなかったので、そういう機会はなかったと考えるほうが自然じゃないでしょうか。

>素行が悪いので戦果をあげても騎士十字章を受章しなかった。
素行については上記のとおりあまり影響していない可能性が高いです。ただ、重大な事件はおこしているのでそれが影響している可能性はあり。しかし、推薦はベーケ軍団長から4回も受けていて、ラジオで特集されているので、決してないがしろにされたわけではなさそうです。あと、確かにトータルの戦果は多いのですが、ヴィットマンのヴィレルボカージュやカリウスのマリナ―ファのような派手な大戦果を出した戦いも見当たらないので、単にもらえるきっかけになるものがなかっただけの可能性もあります。

>戦車に娼婦を連れ込んだ。
ネットで大人気の噂。調べていたけれど元ネタが見つかりません。大抵の噂は英語やドイツ語でもひっかかってくるのですけど、これは日本語でしかひっかからないです。仮に日本だけで広まったとしたら元はなんだったのかとても気になります。
それから、当時女を戦車に連れ込むのは別に珍しくない話の気がしますが、なぜ彼だけにこの話が強調されるようになったか疑問です。

>捕虜を不当に暴行していた「アインザッツグルッペン」の兵士を殴った。
これは元ネタあり。ただし、資料では銃を突き付けて制止させようとした。この事件はルーベルも近くにいたので、おそらくは事実だったと思われます。しかし、それで具体的にクニスペルが処罰されたという話は見当たりません。昇進や勲章に響いた可能性はなきにしもあらずですが、はっきりとしたものは見つかりませんでした。乱暴というよりは正義感に駆られての行動だったように思うのですが、どうでしょう?

>首に刺青を入れていた。
日本ではなぜかあまり見かけない噂の一つですが、英語やドイツ語では結構頻繁に見かけます。いわゆるワイルドなイメージから来たのでしょうか。クニスペルの墓が発見された決め手が死体に残ったこの刺青だったという話も流れていましたが、さすがにそれはないだろうと思います(実際には身に着けている鉄製の識別票が決め手になった)。

 参考は主に、Feldwebel Kurt Knispel: Der erfolgreichste Panzerschuetze und Panzerkommandant des 2. Weltkriegesです。
 ただ、この本も"どうやって調べたのかいまいちわからない話"も多く、本当に史実と言い切っていいかは怪しい物らしいので、一歩引いて見るくらいがちょうどいいかもしれません。

 もし、間違いがあったり、これ以外になにか知っている人がいましたら、一報貰えると幸いです。






 
 

 
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テーマ:歴史 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2015/04/27(月) 20:15:35|
  2. 偏りに偏った趣味のお話
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