The Wizard of Science

人類学のこと、歴史・考古学のこと、航空機のこと、特許のこと、海外の言語や書籍、などなど、たまには横道にそれたりする長文が多めなブログです。

女性兵士戦記関連書籍の紹介

最近はツィッターの活用が増えていることもあり、いまいちブログの方には手が伸びなかったりしますね。
ツィッターの方があまり整理できていない小ネタ程度でも思いついたときに書けますし、順番を整理しなくてもよいので気持ちが楽、という面はとても大きいと思います。
とはいえ、内容が増えてきて長文になってくると、やはりブログの方が1長あるという気もしますし、ツィッターで書いたことも整理したりして並べるとこっちで改めて書いた方がいいということもままあります。

今回は、ツィッターでもたまにつぶやいている女性戦士の戦記関連ネタのなかで特にここ最近印象深いものをいくつかあげていきたいと思います。
例によって独ソ戦関連なのは、そもそも女性兵士はソ連ぐらいしかいないのに加えて、私の同人活動とも関連しているのですが、正直ここにあげているのはすぐには同人ゲームに使うような感じでもなく、ただ読みたいから、という趣の方が強いです。
戦記関連は絶版になって入手困難になりやすいものが多く、Amazonでも高価なものになっているケースがあり、お勧めしても手に入らないか、異様に困難ではあまり意味がないので、今回の3冊はその中でも割と手に入りやすいものを選んでみました。


「狙撃兵ローザ・シャニーナ―ナチスと戦った女性兵士」
 最近、本屋で平積みされていたので結構この本は目立っていました。シャニーナの名前は以前にソ連女性狙撃手を扱った本が出ていて、その中でも大きく扱われていたので彼女の来歴が従軍前からその最後まで描かれているとあって購入。
 内容は記録集というよりも記録を利用した小説、といった感じで、言葉もかなり現代日本人向けに意訳されているのではないかと思われる部分が多々あります。
 ただ、そのおかげで戦記関連では稀にみる読みやすさで、普通の小説を読むようにどんどんページを進めていけるので、ちょっと興味はあるけれどどれを読めばいいかわからない、とか、戦記は難しそう、という人にはお勧めできる一冊に仕上がっています。
 逆にシャニーナの付けていた日記からの引用は本の厚みに比べれば限定的で、本来はかなりの数の手紙のやり取りがあったと思われる宣伝将校(彼がシャニーナの日記を秘密裏に保管していたおかげで戦後日記がロシア国内で出版されることになった)関連は話の都合上後半の限定的なものに留まっており、後述するソ連女性狙撃手の本では扱われていたエピソードもこの本ではなかったりと、じっくりと記録を見たいという人にはあまり向かないものになっています。
 ソ連・ロシア関連の本は色々な事情から英語版も限定的だったりするので、せっかく原典である彼女の日記に触れられるのであったら、もっと紹介してもよかったんじゃないかと思い、そこだけが残念という感じです。
 しかし、記録を優先すると当然非常に読みにくく、馴染みのない単語を解説していくだけで本の厚さがとんでもないことになることも考えられるので、あくまでも興味のある人が入りやすいようにする、ということを目的としたものだと考えると十分どころか突出した出来だと思います。
 従軍してからも興味深いのですが、従軍前の学生時代の政治グループ(当然ソ連だけに赤い)での出来事、そして、それが後年にも彼女の日常に入り込んでくる、という下りは戦争を抜きにしても興味深い内容となっています。やっぱりというかなんというか、政治活動をすると同じ政治思想であってもしっかり警戒されてしまうのですね……。


「フォト・ドキュメント女性狙撃手: ソ連最強のスナイパーたち」
 先ほどのシャニーナの名前を見たのはこちらの本が最初で、シャニーナ以外にも史上最大の戦果をあげた伝説の狙撃の英雄リュドミラ・パヴリチェンコ、48歳という高齢にて従軍し多数の狙撃戦果をあげたニーナ・ペトロヴァ、逆に17歳という異様な若さで従軍したクラヴティナ・カルギナ、等々、個性的なソ連の女性スナイパー達(あと少しですが戦闘機エースであるリディア・リトヴァクも触れています)を何人も紹介しつつ、大量の写真、そして武器として使われたモシン・ナガン狙撃銃の解説など、"よくぞこれだけのものを綺麗にまとめた"と感心してしまうような出来になっています。
 特に文章だけだと分かり難いものも写真がこれだけ揃っているといまいち独ソ戦に馴染みがない人にも情景をイメージしやすいだろうと思います。こちらの方が全体的な戦場の流れの解説(レニングラード包囲戦がどういったものだったのか等)もありますので、先にこちらを読んでから他の本に行く、という順番でも全く問題ないでしょう。逆に個々の人物やエピソードをもっと知りたい、と思うとこれだけではちょっと不足することがあり、先のシャニーナにしても政治活動の下りはさらっと流されて終わりなので、それこそ戦場以外の部分はまた別途調べていく必要があります。
 ピックアップされたエピソードも楽しい物から悲惨なものまで色々で、それは非常に興味深いものも多いのですが、前後関係がちょっと分かり難いと感じるものもないわけではないので、ちゃんと誰にでもわかりやすいかと考えると多少厳しいようにも感じました。また、写真も基本的に当時のプロパガンダとして撮られたものですので、どうしても検閲を通った比較的見栄えの良いもの、になります。彼女たちの笑顔にはそれなりにバイアスがかかっているのだということもある程度踏まえたほうがいいので、この本だけで終わってしまうとそれはそれでもったいない、と思われます。
 できるのであれば、ぜひ、これを起点に、いろんな本に触れてもらえればと願います。


「戦争は女の顔をしていない」
 2015年にノーベル賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ氏による女性兵士に限らず戦争中に看護婦や補給部隊として働いた多くのソ連女性たちの証言を集めたもの。余談ではありますが、毎回、村上春樹がノーベル賞を取れるかどうかに注目するくらいなら(取った際にだけ注目すればいいのであって……)、きちんと文学賞受賞者がどういうものを書いてきたのか紹介したほうが遥かにいいと思うのですが、どうなんでしょうね。
 元々、本はかなり前に出版されており、そちらの入手が困難だったのですが、その後、文庫版がでたので比較的入手は容易になりました。
 こちらはある程度カテゴリーに分けられてはいますが、全体にはとにかくあらゆる方面の人々から集めた当時の話を並べている、というもので、単語に関する解説も限定的であり、内容を全部理解するにはそれなりの知識が必要なのと、良くも悪くも心揺さぶられるエピソードがこれでもかと詰め込まれているので、人を選ぶ面があるだろうと思いました。
 なにしろ、ここに書かれている話の多くは何かしらの事情があってこれまで話すことができなかったか、政治的な理由でそもそも話すことが許されなかった、といった類のものですので、そうなる相応の理由が常についてまわるのですから、読むのが容易であるはずがないのです。
 いくつかのエピソードは上記のソ連スナイパーの中と類似するものがありますが、逆にこちらを読んだ後で見返すと上記で語られていたエピソードの別視点としてみることが出来たりと、深く楽しむことができます。
 筆者はこういった話を人から人へ、古い記録を丁寧に探し求めて収集し、さらに出版するに当たっても周囲の風当たりが強く、何度も挫折しそうになったことが冒頭に書かれています。今の日本人が読むには馴染みがない分、色々な難しい点があるとは思いますが、これを書き上げるには想像を絶する困難と努力があったことは容易に想像できます。
 一つ一つのエピソードは短く、紹介は即ネタバレになってしまうので書けないのが歯がゆいのですが、少しでも興味がわいたら是非手に取ってもらいたい一冊です。


 とりあえず、今回はこんなところです。
 また興味深い書籍なり、情報が入ったら逐次こちらかツィッターで紹介していきたいと思います。



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テーマ:歴史 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2016/02/29(月) 00:18:02|
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