The Wizard of Science

人類学のこと、歴史・考古学のこと、航空機のこと、特許のこと、海外の言語や書籍、などなど、たまには横道にそれたりする長文が多めなブログです。

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女性の社会進出に関して歴史をかなり大まかに振り返る

ある程度普段から様々な情報に触れている人は、日本では女性の社会進出が遅れており、高齢化による労働力不足を補うためにもより大規模な女性の社会進出を進めるべきだという話をどこかで聞いたことがあるのではないかと思います。
ですが、なぜ日本は女性の社会進出が遅れていると考えられているのか?に関して、案外それほどクリアーに書かれることはありません。実は読めば割と色んなところに書いてあるのですが、書き手の得意分野の違い、思想・文化、それ以外に周りへの配慮といったものが影響して、「なんとなくは言いたいことはわかる」レベルでお茶を濁すことが多いのではないかと感じます。

ここでは私もそういった点に関して必ずしも全ての人にとってクリアーにわかるほど上手く書けるとは思わないのですが、一つの大きな歴史的観点の流れということで書いてみたいと思います。ああ、ようするにこういうことかみたいに思うところが一つでもあれば幸いです。

1、 男女の分業が昔からだという嘘
まず歴史的観点から見ると、一般的に常識と話されている「男女による働き方の分担が昔はきっちり分かれていた」という話がほぼほぼ嘘だと言っていいというところから始まります。大体は「男は狩りをやって…」の話がでるのですが、以前、このブログでもWoman as Hunterと題して「原始時代には普通に女性も狩りやってた可能性が高い」ということを書いたことがあり、これは簡単にまとめて言えば「子供を産んで育てる役割があろうがなかろうが、基礎体力があろうがなかろうが、その日の食料が取れなければ飢えて死ぬわけで、安定した食料供給が見込めないなら動ける人間はできる限り全員で狩りをやる以外にない」というのが考えられるということです。そして、残っている当時の人骨から男女ともに全般かなり鍛え上げられた体をしていたことがわかっています(細かいことを言うとまた色々ありますが……)。少なくとも女性が家庭というものを意識するのは大体人類が農業を始めて以降だと考えられるのですが、それでも別に歴史を見なくても今日の農家を知る人ならわかることではありますが、農家の女性は普通に毎日働くのが当たり前です。体力の差があって子供ができたりして労働量が変わるかもしれませんが、働ける範囲を限定する意味はない。働ける人が働く、やれることはやってお互い助け合っていく、というだけの話なのです。

2、 なぜ社会は男女を分けるようになったのか?
単純に少数で働くレベルであればわざわざ男女の労働を限定する必然性はないのですが、これが大規模集団化すると話が変わってきます。狩猟採集をやっている時点では常に獲物を求めて移動するなどの必要があるため一部の限定した状況を除き大規模集団化することが難しかったので男女分業はそこまで考えなくてよかったのですが、農業が広まり集団が社会化・組織化していくと様相が一変します。ものすごくかいつまんで言ってしまうと「大量の男性の中に女性を入れるのが危険」という事態が発生するようになるわけです。具体的にどういう危険かはある程度大人なら想像がつく範囲だと思います。この辺りの事情を最大限ぼかすため、人によっては女性の社会進出の話はなかなか曖昧な表現に終始しなければなかったりします。数人レベルならば不要だった「犯罪の管理」が必要になり、そしてどんなに管理しても人が大量にいる以上全てを防ぐことは難しい、だったらいっそ「ばっさりわけてしまおう」、そして法律や宗教思想などを駆使して縛ろうというのが根本の発想にあります。これはこれで乱暴ではありますが、社会ができてきた頃を考えると致し方ない面もあるわけで全てを否定できるものではありませんし、正確には今だって全て解決はできていません。なんにしろ、社会や宗教が男女の関係に厳しいにはそれなりの理由があることを踏まえ、続く時代を見ていく必要があるのです。

3、女性は働けない。だったら……。
労働を男性専用にし、女性は結婚させあくまで家庭にいて特定の状況を除いて労働現場に入れなくすることで一応の治安を手に入れることはできますが、これはこれで新たな問題を引き起こします。最も大きいのは労働の担い手である男性がいなくなってしまった場合。女性は労働によって生活を支えることが社会的に困難であるので、他の男性に頼るしかありません。それでも特に戦争なんてやった日には大量の未亡人が出てしまい、頼る先もなくなってしまいます。イスラム世界で男性が複数女性と結婚できるのが許されているのは、それがある程度妥当な手段であるからに過ぎません。もし、結婚という手段で頼ることができない場合は、結婚という責任は取らない範囲で男性に頼るか(明らかにアレです)、違法行為で生活費を稼ぐしかありません。基本的に不倫禁止で1人としか結婚してはいけない宗教観念を持つ欧州各国では、この(当時の基準では)違法行為を行う女性が戦争の結果激増するという事態が多発します。例えば男装して男性と同じ現場で働く女性という話が伝わっています。もし、これが公にばれると罰されるのは女性の方だったといいますから、欧州キリスト国家が複数婚姻を認めるイスラムに比して優位性云々を語るのは、なんとも難しいところです。こんな危険を冒すぐらいならと女性や子供達で盗賊になったり、大規模化して盗賊団を結成してしまう人達まで現れます。本来、治安の安定を狙った男女の分業が逆に犯罪を増やすことになる本末転倒な状況が出てきたゆえに”変わらなければいけない”と考える人たちも多く現れます。逆にある程度複数婚姻によって安定が維持できたイスラムはそのまま続いてしまったという面もあるのですが、それはまた別途機会があれば書いていきます。

3、また男たちが戦争を始めた。しかも今度のは桁が違う……
女性未亡人の問題は深刻なものだと受け止められ、改革する話は出るものの大きくは変わりません。産業革命を機に女性労働者は大幅に増加するものの、これも制限する法律が出たりして流れはできる一方で抑止する方向にも行くという両面性を持っていました。その後、この女性の社会進出の流れをより促したと考えるのは2度の世界大戦だと考えられます。この第一次・第二次の両世界大戦がそれまでの戦争と違うのは、国家の生産力を全て動員してぶつかり合う総力戦だったことです。とにかく、大量の兵士が戦場で次々に死んでいき、兵士が使う兵器は次々に使い潰され、衣食住という生活に関わるものも毎日膨大に消費されていく。こうなってくるともはや女性を限定的な場所でだけ労働させなければいけないなどと四の五のも言っていられなくなます。もちろん、国の若い男性のほとんどが戦場に行ってしまったので、女性を工場などに大規模導入してもそんなに上記の問題にならなかった、という側面もありますが。そして、戦争が終わっても男性が大量にいなくなってしまったので、女性をある程度雇用しないと国が立ち行かない。どうしても入れにくいところには外国人を雇用して補填しよう。こうして今日の欧州の姿が形作られることになります。ある意味なし崩し的ではありますが、現代の女性の社会進出を考える時に世界大戦はどうしても無視できない要素なのです。

4、 日本とアメリカ、ちょっと違う事情
さて、ここまで書いてきた話は主に欧州方面の話です。一方でアメリカ、そして我が国日本は概ねの流れとしては共通する面はあるものの違う部分もあります。まず、近代以前の日本では婚姻でも労働でも男女における分業は世界的に見ても特に庶民では割と緩く、むしろ近代化することで欧州的な男女分業が強まったところがあります。そして、世界大戦は2次にはご存知のようにかなりの被害を受けたものの1次には極々限定的にしか参加していません。アメリカは近代に欧州からの移民によってできた国ですから欧州的なマインド部分は共通するものの、世界大戦には1次は途中参加、2次でも参加しますが他の国のように本国の多くが深刻な被害を受けたわけではありません。これにより日米は欧州国家よりも女性の社会進出に関しては少し違った色彩を帯びることになります。端的に言えば欧州国家ほどに戦後すぐには女性の社会進出が進まなかった。男性はかなりの数亡くなっていたので進出するにはしたのですが程度の違いが出てしまいます。その結果、働いた経験がありながら戦後また労働現場から外される、という事態になり、戦後の好景気で仕事が増える中でも働きが制限されるというかなり矛盾した状況に困惑することになります。一般的にはアメリカはなんとなくずっと女性の社会進出が進んでいた印象があり、それはある側面では正しい物の、実際は戦後突然家庭的な女性論が台頭し、その後にそれを打ち破ろうとする動きを経たという複雑な事情があることを忘れてはいけなかったりします。


5、 日米で女性進出が違う理由
戦後、一時的に女性の社会進出が後退したものの、再び女性の社会進出が活発となったアメリカ。対して日本は確かに戦後の女性の社会進出を促す運動自体はあり小さな改善が積み重ねられたものの、アメリカほどに強烈に進まなかったことは割と広く認識されているかと思います。欧州ほど進まないのは当然にしても、アメリカと比して進まないのはいくつか理由が考えられます。まず、そもそも戦時中もアメリカほど大規模に女性を導入していない。実は工場で働く女性は日本では未婚女性、多くは若い女学生が中心だったのですが、アメリカでは年齢や結婚しているかに関わらず工場で働いていました。また、ほぼ強制だった日本と違い、アメリカは自由主義の国でしたので大規模な宣伝により自主的に工場で働こうとするように促した。これが戦後の女性の労働意識に大きな差が出たのではないかと考えられます。まあ実際わざわざ宣伝なんかしなくても開戦直後にハワイを派手に爆撃された話が駆け巡り、危機感と不安を煽られる中夫や恋人といった近い男性がみんな戦場に行ってしまい、更に工場に行けばちゃんと賃金が出てそのお金で自由に買い物ができたとあれば、そりゃみんな行くだろうし意識も高かろうということもあるんですが。日本は反対にどうしても結婚して家を守っている女性に対しては、あの大日本帝国でも、しかも国中爆撃されて切迫しまくっているにも関わらず、ほとんど動員できなかった。前例ができるとその後も「未婚のうちは働くが、結婚したら家庭に入るものだ」という認識が固まってしまいます。この意識自体は特に古くもなければ、実際は戦時中から女性はみんな働いても全く構わなかった(むしろ流れとしては働くほうにいくだろう)にも関わらず。


終わりに
もちろん、既に日本の女性の労働状況というのは変わりつつあります。結婚した後も働く人は多くなってきました。しかし、そもそも若い人が多くないこともあって、女性の社会進出に関する全体の意識は上記のような「結婚したら家庭に」という意識が強く残っています。そして、それがどういう経緯でそうなっていったのか、なぜ欧米と違うのか、という点を単純な意識論だけに留まらない大きな流れとして捉え、今後の改善なりに結びつけていければと思っています。





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テーマ:歴史 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2017/02/28(火) 21:18:04|
  2. ちょっと硬めな勉強のお話
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
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