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The Wizard of Science

人類学のこと、歴史・考古学のこと、航空機のこと、特許のこと、海外の言語や書籍、などなど、たまには横道にそれたりする長文が多めなブログです。

ファンタジーの典型は本当に「魔王と勇者」なのか?

また少し時間が空いてしまいましたが、Entyでも記載の通りゲーム制作は少しづつ進んでおり、心配事もないわけではないですが、ここまでくれば開発中止(俗にいうエターなる)にはならなくなるぐらいには制作した量はあるのでご心配なく。

さて、随分と前になるのですが私の作ったゲームのレビューに「勇者が魔王を倒すわけでもなく…」というところがユニークだと書かれた方がおり、ちょっとこのファンタジーの典型と言われる「勇者と魔王」について書いてみたいと思います。

この「勇者と魔王」、ファンタジー/RPGの典型的な構成だとして、これをネタにした作品も実に多いです。魔王を倒す使命を帯びた勇者が魔物の王たる魔王を倒しに行く。こういった話がいわゆる大前提的な使われ方をすることに異論がある人はそういないとは思います。
でも、ちょっと考えてみてください。王道といわれる「勇者と魔王」をやったファンタジー/RPG作品ってどれだけあるでしょう?
実は古今東西あんまりありません。そんなはずはない、と思う人も自分の好きなファンタジー/RPGの作品でどれだけ「勇者と魔王」があったか思い起こしてみてください。多分、あんまりないと思います。
一番、日本のファンタジー/RPG界隈で影響の大きいドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーにしても魔王を扱っている作品は限られます。強いて言うならばいわゆる典型なのは「ドラゴンクエストIII」しかないです。

そもそも、ファンタジーのストーリーはその黎明期から非常に複雑でしたので、いわゆる最後の敵、ラスボス的なものがない場合すらありますし、その最後の敵がいるにしても出自も様々です。主人公にしても、なんらかの超自然的啓示をうけたり、生まれから特別だったりすることはあっても、最初から勇者であることの方が珍しい。
一応、魔王ではなく「最後の敵:ラスボス」的要素をファンタジーの中に見出すことはありました。ですが、それが日本で魔王という固定化された概念になるのは割と最近の話だということです。魔王以上に勇者という概念は新しく、考えようによっては未だに確立していないんじゃないかと思える部分もあったりします。

では、別にファンタジー/RPGの典型でもなんでもない勇者と魔王がテンプレ化した理由はなんなのか?…それは前述のドラクエIIIの大ヒットもあるのでしょうが、革新的なアイデアであったわけでもなく、その時代といいますかタイミング的に"ネタにしやすかった"のが大きいのだと思います。元々割と複雑だったファンタジー/RPGの世界を切り詰めてシンプルにし、勧善懲悪的部分を突き詰めて頭に残りやすい用語を使用したところが多くの人に受け入れやすく、そこからバリエーションも作りやすいということで、このジャンルを広める要因となったのでしょう。

では、そんな勧善懲悪のテンプレ的なものが勇者と魔王以前はなかったのか?というとそれもちょっと違います。元々あったのは「騎士と竜」でした。これはファンタジーと並行もするのですが、古くは「騎士物語」という物語のジャンルがあり、神話世界の存在である竜と勇ましく戦う騎士、そして美しいお姫様というテンプレートが確立していました。
この「騎士と竜」テンプレは過去には「勇者と魔王」よりもポピュラーでしたので、日本で発売された初期のRPGのビジュアルとして鎧を着た騎士と竜を描くというのは一般に広めるための重要な要素でした。
ですが、ファンタジーの要素ではある物の騎士と竜は必須要素ではないので、ファンタジーが広まるにつれてその要素は特に押されることはなくなっていくのです。今更言っても遅いのですが、「竜退治はもう飽きた」と言っている頃にはとっくに騎士と竜ではなくなっている上、それ以外の要素を押し出すというのは珍しくもなんともなかったのです。*戦車を使って戦うRPGは珍しかったですけどね。

もちろん、「騎士と竜」も本当に騎士物語全体のテンプレだったかというとまたちょっと違います。これも調べてみるとなぜ騎士物語の中からその要素が抜き出されて語られるようになったんかと分かってきて面白いでしょう。
とにかく、ここで重要なのは、いわゆる典型・テンプレ的だと思っている物は全体をちょっと見てみると実はそうでもない、ということです。典型・テンプレ、そして果てには常識的なものだと多くの人が思い始めるのはそれが多く広くあることよりも、まず何かインパクトのあること、そして、ちょっと調子よく語るのに都合がよい事が重要だったりするのでしょう。

よく言われる「常識を疑う」のではなく、むしろ「常識が出来上がっていく過程を考える」研究というのを行う流れが今後できたら面白いだろうな、と思いつつ、今回は筆を置くことにいたします。




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テーマ:思うこと - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2017/09/03(日) 11:41:23|
  2. ちょっと硬めな勉強のお話
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  4. | コメント:0
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