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The Wizard of Science

人類学のこと、歴史・考古学のこと、航空機のこと、特許のこと、海外の言語や書籍、などなど、たまには横道にそれたりする長文が多めなブログです。

ネアンデルタール人と現代人の食事の違い

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ネアンデルタール人とは今からおよそ約20万年前に出現し、2万数千年前までにヨーロッパや中近東に暮らしていた絶滅した人類の一つである。
このネアンデルタール人は北京原人やジャワ原人の総称として現在使われているエレクトス人よりもずっと新しく登場した人類で、絶滅した人類としては発見されている中では最後の種という事になる。
ネアンデルタール人は進化人類学にとって非常に重要な課題として今まで研究されてきた。
それは、少なくとも彼らの住んでいた同じ時期に現代人の直接の祖先 Homo sapiensはすでに登場しており、ヨーロッパと中近東という同一地域に50,000年以上という長い期間、「人類が人類以外の人類と共存していた」という事実が分かっているからだ。
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その生物学的な違いは上の写真を見ればご理解いただけると思う。
身長は現代人より低く手足も短いがかなりがっしりとした体格で、特に頭が大きく、脳の容積も現代人より大きい場合がある。

だが、この生物学的な分類の違いだけでなく、彼らの生活が一体現代人のそれとどう違うのか?については様々な議論が行われてきた。
その中で特に昔からずっと調べられてきたのはネアンデルタール人と現代人の食生活に関する研究である。
元々、彼らのがっしりとした体格や短い身長、手足は食物の影響があるのではないかと提案されていた。(他にも当時寒かったヨーロッパの気候に適応したのではないか、など)。
だが、最近の研究では特に科学的な分野でそれまでに見つかっていた考古学的な証拠から、新しい見解、もしくはそれまでの見解を強固にすることが可能になってきた。
例えば、電子顕微鏡の発達で骨や歯といったものの詳細を調べ比較したり、彼らの残した動物の骨や植物の種なども特定することができるようになっている。
更に、Stable Isotopeと呼ばれるプロテインの比率を図ることで、その生物が何を食べていたのかを特定するなど、新しい方法での研究の発達も目覚しい。

今回は特に論文の翻訳抜粋が主にして、このネアンデルタール人と現代人類の食事の違いについて、いつもより長い長文を書いていこうと思う。
まず、ネアンデルタール人は現代人に比べて大量の肉を食べていた、当時の食物連鎖の頂点に位置する捕食者(top level Carnivor)だと考えられている。特にネアンデルタール人はマンモスを代表とする大型の陸上草食哺乳類を好んでいたと考えられており、これらの肉が全体の食事のほとんどを占めていたらしい。
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私達がイメージする原始人がマンモスを追いかけてその肉を毎日食べる姿は、むしろ現代人よりもネアンデルタール人のそれに近いのかもしれない。
ただし、彼らも地域によっては大型哺乳類だけをとっていたわけではなく、一応、気候や条件に合わせて別の食べ物を食べる柔軟性は持ち合わせていたらしい。
Stinerなどによると、ネアンデルタール人は地中海沿岸ではクラム貝、ミュール貝、オイスターなどの貝を食べていたことが分かっている。
また、Perez- Perezなどは気候が寒くなると、取れる動物の割合が減るのか、木の枝や根を食べていたと提案している。
一応、他の食料を補助的に取ることはあっても、基本的に大量の肉を取るというのがネアンデルタール人の食生活であったようだ。
一部ではネアンデルタール人が現代人に比べて運動能力が小さいと考えている人も多いため、彼らが本格的な狩ではなく、Scavenging いわゆる死肉をあさるハイエナのような生活をしていたという提案も過去にはあったわけだが、これに関しては否定的な意見が多い。
つまり、ネアンデルタール人は大規模な狩を行いつつ、小規模な沿岸の貝や木の枝や根などを補助的に食べるという食生活だと考えて、間違いないだろうというのが主な解釈である。

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一方の現代人類であるが、実は大規模な大型哺乳類の狩というのはネアンデルタール人ほど頻繁ではなかったらしい。
それどころか、ネアンデルタール人が大型哺乳類の狩に固執する一方で、地域や状況に応じて様々な形態をとり、少しづつ狩の割合が減っていったのではとStiner and Murno(2002)は主張している。
この形態の変化は人間の社会の中での男女の仕事の役割分担にも影響があったのだそうだ(Kuhn and Stiner 2006)。
つまり、様々な食料を取る生活事情では性や年齢での仕事の分担を行ったほうがずっと効率的なのだという。
こういった、食料の時代や地域における大きな変化というのはネアンデルタール人では見られない。
また、現代人類では特に海や川での狩の割合がネアンデルタール人に比べて多いことも分かっている。
Richard et al 2001によると、特に新鮮な海や川の幸を現代人は好んで食べていたらしい。
また、植物を食べる習慣も地域によっては時代が下るに連れて広まっていったようだ。
具体的には、AcornやPistachioなどが現代人類の初期に食べていたものとして挙がっている。
これらは(とくにピスタチオなんかは)剥いてからでないと中身が食べられないので、現代人はそれなりに手先が器用だったのか、または石器などの道具を使って皮を剥ぎ、中の実を食べていたのだろう。

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テーマ:雑学・情報 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2008/02/17(日) 22:34:56|
  2. ちょっと硬めな勉強のお話
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
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